有職織物
優雅な丸紋。
その文様の名を知らずとも、一目で有職文様だと分かる代表的な文様の一つかもしれませんね。
ベージュの濃淡で織り上げた入子菱文様の地組織の上に四羽の蝶が羽根を広げ、臥せて向かうような様を現した丸文、臥蝶の丸文を織り上げた手織りの逸品、有職二陪織物の名古屋帯です。
丸文は、有職らしい穏やかで侘びた風情の曙色、深紫、老竹色などで織り上げられ、しっくりと上品です。
訪問着や無地などの垂れものはもちろんですが、紬にも合わせていただけますね。
有職柄の織名古屋帯自体は、様々な織元で作られていますので、目にする機会はございますが、こちらは別格、二陪織物のいわば本流。
袋帯に適う格の高い名古屋帯として、自信を以てお勧めいたします。
特に茶席にお勧めです。
平安の時代、主に貴族が公家の服装や調度品などの装飾に用いた文様の総称です。
有職に限らず文様の多くは渡来ですが、それらを日本独自の文様として、日本の気候や風土、文化に合わせ、貴族の優美な美意識が育てた文様の数々は、飽きのこない吉兆文様として、また格の高い文様として、着物や帯に使われています。祭祀の装束や能衣装として、脈々と受け継がれている文様なのです。
◯ 二陪(ふたえ)織物とは
二陪(ふたえ)織物とは、広義では唐織の範疇となり、地文様の上に上文を浮かせて織り上げる織物のことをいい、少なくとも11世紀には、几帳の裂、小袿などに織り出されていました。その後、男性の狩衣などにも用いられる等、華やかで格調高い二陪織物は、高位の貴人達に尊ばれ、公家装束や祭祀に用いる装束として、連綿と今日まで受け継がれています。