名古屋帯(織り)
縞の無限の可能性。
江戸期からの伝統的な織物「小倉織」を現代に蘇らせ、そこに新たな世界を築かれた築城則子さん。
先生に初めてお目にかかったのは、もう15年以上前になるのでしょうか。
眼前に、圧倒的に拡がる縞の世界の拡がりに、ただ見惚れていたことを思い出します。
先生の仰った
「私は職人にはなれない、同じものを作ることは出来ないから。」
簡潔なその言葉は、真摯な姿勢と職人への尊敬が感じられ、こうして携わらせていただける私達自身を導く標となっています。
「翠鼓」のこのグリーンの迫力、その美しさ。
静謐でありながら、逆に多くを見るものに語りかけてくる圧倒的な存在感。
ご自宅近辺の草木の命をいただいた染め色から、こんなに綺麗なグリーンになるのですね。
木綿とは思えない極上の糸、染め、そして艶。
素晴らしい染織品は私達の生活を彩り、実り豊かな人生を送るためにかけがえのない宝物。
素晴らしい一日を。
明日も佳き日になりますように。
日本工芸会正会員
1952年 福岡県北九州市生まれ
1974年 染織研究所で染織の基本を学ぶ その後、久米島、信州などで紬織着物について学ぶ
1978年 西部工芸展初入選
1984年 小倉織 復元
1985年 小倉縞木綿帯「連」日本伝統工芸展初入選
1992年 日本伝統工芸染織展初入選
1994年 小倉縮 復元
1995年 遊生染織工房 設立 北九州市民文化賞奨励賞受賞
1996年 重要無形文化財保持者、北村武資氏による「羅」伝承者養成研修に選ばれる(2ヶ年)
2001年 日本伝統工芸染織展・鑑審査委員となる
2005年 第38回北九州市民文化賞受賞 第25回伝統文化ポーラ賞 優秀賞受賞
2007年 文化庁芸術家海外派遣制度の特別派遣として80日間ロンドンにて研修
2008年 第42回日本伝統工芸染織展 文化庁長官賞 受賞
2010年 第45回記念西部伝統工芸展 朝日新聞社大賞 受賞
2013年 第47回日本伝統工芸染織展 京都新聞社賞受賞
その他個展、受賞歴多数
福岡県北九州市 遊生(ゆう)染織工房 主宰
■小倉織とは
木綿とは思えない生地の艶や滑らかさが特徴の小倉織(こくらおり)は、江戸時代初期に北九州筑前小倉で始まったそうです。この良質で丈夫な木綿は「小倉木綿」として全国に広まり、帯地や袴地として珍重されたのですが、残念な事に昭和初期に途絶えてしまいました。それを昭和59年に復元されたのが築城則子氏です。何とか現存していた古い縞帳の少しのはぎれを頼りにして、糸作りから始め、数々の試行錯誤を経て、復元されたという築城氏の小倉織は、作家の感性という大きな武器を手に入れ、現代に生きる織物として蘇ったように感じます。