紬・木綿の御誂え
弊店展示会場にて開催いたしました「錦秋染織展」。
この会では、いつもお世話になっている結城紬の織元を織り手さんと共にお招きし、糸取り&地機(居坐機/いざりばた)の機織り体験とレクチャー会を開催させていただきました。
結城紬と括っても千差万別ですね。
お値段の違いが品質の違いに反映されているのかも分かり難く、結局は、誰が手掛けた作品なのか、扱う人の信用による処が大きいように思います。
弊店では信頼できる織元の結城紬で、且つ、地機(居坐機/いざりばた)で作られた作品をお勧めしています。
原始的な機の構造だからこそ、結城紬の糸味を活かした着心地が表現できるのではないかと思っています。
手加減しながら織ってゆく、人の手の温もりが結城紬にはよく合います。
さて、この会では、織り上がった反物以外に、縞帳をご覧いただいての受注”お誂え”も承っておりました。
お客様と共に弊店スタッフも機織りを体験させていただき、
証紙の種類や風合い、結城の見分け方等のレクチャーを受け、何気なーく、パラパラと縞帳を繰っておりましたら、
「素適な柄♪」 と スタッフの弾む声。
そう、 つまり”出会ってしまった”のです。
いつかは結城紬をと漠然と願っていたスタッフですが、初お誂えが結城紬の誂えとは、徒歩からいきなり全速力ダッシュに切り替わるようなもの(笑)ですから勇気が要ったことでしょう。
けれども、こうして清水の舞台からダイブすることが出来るのも、信頼してお願いできる織元がいるから。
こうしてスタッフの初お誂え挑戦が始まったのでした。
ちなみに、織り手さんも、会にいらしてくださったその職人さんにお願いすることに。
織り手さんご自身も「自身の織る着物を着る(予定の)方にお会いできるなんて嬉しい!」と喜んでくださいました。
縞帳から選んだ柄は、崩しの縞。
崩しとは、経あるいは経の絣糸を一つの縞の中でランダムに配置するもの、経と緯の絣糸で構成する格子が乱れた、崩したような感じに見えることからそう呼ばれる柄のことです。
しかし、縞帳ではなかなか反物全体がイメージし難いものですね。
無地染めであっても、小さな面積の色見本を元に染めるのは難しいものですから、織りの柄ものであれば、尚更です。
ちょうど、店長が崩しの市松柄の結城紬を着用していたこともあり、より着姿がイメージがし易かったことと、織り上がった反物が多数ございましたから、それらを見比べることが出来ましたので、分かりやすかったと思います。
スタッフに似合うのはどんな感じがいいのか、
縞の位置や分量は?
また、バランスは?
等々検討を進めてまいります。
同じ幅の縞でも、その中に何本絣色糸を入れるかで織り上がりの色合いが変わります。
本数が多ければ濃くなり、密度が薄ければ薄くなる。
また、絣色糸を入れる間隔を変えることでも布の表情は変わってまいります。
そういった意味でも、崩しの縞は、考える要素が多いだけに誂えに於いては難しいものなのですが、ニュアンスある表情の面になりますから楽しみですね。
概略が決まったところで紙に織りの図案を興してゆきます。
誂えの場合、出来上がりの身丈が予め分かります。
その身丈に合わせて、最適な位置に最適な柄が出るように原寸大の図案を、体に当てて確認してまいります。
お色はスタッフの好きな色、紅藤色から白藤色の濃淡で。
織る前に、崩しの部分の絣色糸をまず染めてもらって、お色を確認します。
ほぼ間違いなく、狙い通りの色が得られるのが結城紬のお色なのですが、この度も、完璧にスタッフ好みの色に染められていて、大満足♪
設計図も決まり、お色も決まり、さあ織っていただくのみ♪
茨城県結城市へは、ちょうどスタッフの結城紬が機にかかっているときに見に行かせてもらいましたので、その時の工房訪問記は、また後程…。
織り上がりました!
スタッフにとてもよく似合っていて、本当に嬉しいです。
憧れの本場結城紬を、しかも、お誂えで手にすることが出来たスタッフは感慨ひとしお。
特に、織手さんの実直なお人柄に触れ、「この人に織ってもらいたい。」と思ったそうですから、本当に嬉しそうでした。
お時間はかかりますが、待った甲斐があるというものです。
大満足の "スタッフ初めてのお誂え編"、でございました。