柄を加える御誂え
9月初旬にお着物をお召しになる機会がお出来になったM様。
お立場を踏まえ無地を、ただいわゆる色無地然、とした品ではなく、古典で且つ洒落感もあるお着物が相応しいのでは、とお考えでした。
時折ネットで弊店をチェックしてくださっていたとのこと、この度ご用命をいただくことと成りました。
M様、誠に有り難うございます。
数種類の生地の中からお選びいただきましたのは、弊店がプリズム市松と命名の白生地です。
単色に染め上げても、小市松地紋がきらきらと煌めき陰影を放つ素敵な生地で、市松模様も小さく上品ですので、品格を失することなく、お洒落さも楽しんでいただけますね。
染め色のオーダーは、白菫色に青みを一滴垂らしたような、そんなお色。
ほんの少しのさじ加減で大きく色のせいが違ってしまうニュアンストーンは、特に染め出しが難しいものですが、無事お心に合うお色が染め上がりました。
さて、M様からは更にリクエストを頂戴します。
背の洒落紋及び右袖口にも柄を、共に刺繍でお入れすることになりました。
葵唐草柄がご希望です。
イメージに近い画像をM様からメールでお送りいただきまして、店長がデザインしてまいります。
M様からのご要望は、
- 背は小さく、袖口はやや大きめに
- 全体的に細いラインで、袖口から袖下へ唐草が垂れるように。
- 金糸、銀糸を加えつつ、色数は少なくシンプルに。
以上のご要望を踏まえ、デザインを興し、刺繍のお色をご提案させていただきます。
そして、刺繍の糸として、紫系の3色と金、銀糸をご提案し、
この中から一番濃い紫の糸以外の4色で縫わせていただくこととなりました。
御意見を伺いながら修正を重ね、デザインが決定いたしました。
刺繍が縫い上がりました。
金糸銀糸を効果的に使い分け、刺繍のラインも暈かしや強弱を付けながら、丁寧に縫わせていただきました。
想像以上ですね、とM様からは過分なお言葉も頂戴し、まずは一安心。
さて、お仕立てにとりかかりましょう。
お仕立て上がりました。
刺繍は、小さな小宇宙。存在感は抜群です。
後日、M様から、好評でしたよ、とお声を頂戴いたしました。
職人共々大変有り難く、心より御礼を申し上げます。
※こちらはお客様の為に弊店でデザインし、お誂えさせていただいたものです。
デザインのコピー、転用を固く禁じます。