工房探訪
結城紬と大島紬のそれぞれの良さを合わせもつ紬を求めて生み出された士乎路(しおじ)紬。
能登半島がかつて志乎路(しおじ)と呼ばれていたことに因み、命名された紬です。
弊店お薦めの真綿紬としてご好評いただいておりますが、その製作現場見学に伺いましたのは2015年の1月。
当時、糸作りや緯糸の絣作り等は能登で、織りと経糸の絣作り等は新潟で行われ、私達は、士乎路紬が士乎路紬たるキモである「糸作り」を拝見したく、能登にお伺いいたしました。
2017年夏現在、新潟へ統合され最終工程の整理加工が能登で行われています。
(2024年現在、制作は終了しております。)
士乎路紬の要は、何といっても糸作り。
一番重要な工程が、糸の選別作業です。
士乎路紬の着心地は、まずこの「節とり」の丁寧な作業無くしては生まれません。
細く均一な糸を作るために、職人さんが手で糸繰りをガラガラと回しながら節の大きい部分や太い部分などを切って、そしてまた繋いでゆきます。
選別されて廃棄される糸がなんと多いことか…。
廃棄される糸はこうしてカゴに取り、まとめて工房脇に積み上げられていました。
余りの量の多さに、勿体ないと思う私達。
けれど、ここまで厳しくチェック、選別されるからこそ、あの着心地なんだなあと納得です。
また、糸を見やすくするために壁に暗幕を貼ってらっしゃるのですが、糸繰りのスピードはとても早く、素早く糸の節を見極める目に、長年の蓄積と経験を感じます。
一階にある生糸かけの工程です。
職人さんの厳しい選別を得て晴れて合格となった糸。
そこに、生糸を右より左よりと交互に巻き付けてゆきます。
ガチャ、ガチャ、ガチャ、と賑やかな音が響いて、声も聞えません。
この工程を経て、弾力があり、毛羽立ちが抑えられ、士乎路紬の糸が生れるのですね。
真綿紬と呼ばれる紬は多くありますが、経(たて)は生糸で緯(ぬき/よこ)が真綿の紬が多い中、士乎路紬は経緯共に手紡ぎの真綿糸という珍しい紬なのです。
この手紡ぎの真綿糸に生糸をコーティングするように巻き付けて、結城紬×大島紬を目指した糸が作られます。
そして、絣括りの工程になります。
最後に、当日いらした能登部のお二人、武久さん・坂口さんとご一緒に。
以前は、それぞれ役割分担があったそうなのですが、今では、製織、糸の整経、糸の選別、絣付け、糸の防染等々のあらゆる作業を全てこなせるようになったのだとか。
素敵な織物を育んでくださって、有り難うございます!