男児用 お宮詣り着・七五三の御誂え
いつもお世話になっておりますK様に初孫様がご誕生いたしました。
お親しく存じ上げているお嬢様がご結婚し、お母様へ。
私共にとっても感慨深く、喜びもひとしおでございました。
K様からは、黒の紋付を基本スタイルとして、もし何か素適なご提案がいただければそちらを、とご指示いただきましたので、金泥のみを用いた、シンプルで且つ品格あるお宮参り着をご提案いたしました。
柄は「亀」です。
亀はお嬢様の研究のテーマでもあり、ご自身もお好きでらっしゃる動物。
また、万年生きる亀は長寿と繁栄のシンボルですから、お宮参り着にも相応しいですね。
御背の中心には亀を、そして裾と両袖には波をお入れいたします。
まず、小下絵を描き図案を検討、大きさやバランス等を確認の為、原寸大の下絵をご用意いたします。
更に微調整を加え、大きさや形を少しずつ変えた後、本草稿の為の下絵が完成いたします。
下絵と並行して、羽二重生地を黒に染め、同時に紋をお入れいたします。
大人用と同じ上質の羽二重生地ですから、染め上がりも格別です。
そして、後の七五三用にと、羽織用の紋付も同時にお染めいたしました。
七五三にはお宮参り着と羽織を同時にご着用となりますが、その折に同じ黒であるように、と、お着物にお詳しいK様のご配慮です。
黒の紋付が染め上がり、仮絵羽(お宮参り着の形に仮縫い)をし、 金泥の為のアタリを描き、最終的な確認をいたしまして、 手描きによる金泥の作業に入ります。
出来上がりました。
まるで絵画を見るような出来栄えです。
もちろん全てフリーハンドで描かれていますから、職人の画力が如何なく発揮されておりますね。
ただ金の濃淡のみで描かれた亀の姿が見事としか言いようがありません。
蓑亀の、海藻の一本一本の筆致の何と素晴らしい事か。
腕の立つ職人の描く金彩には、色は必要なく、凛としています。
こうして画面を見ておりましても改めて惚れ惚れする出来栄えでございます。
そして、ところどころに金糸で刺繍も施し、立体感や更なるニュアンスを加えてまいります。
付け紐や比翼袖もお付けし、裾と袖口にふき綿をお入れして、K様のお宮参り着のご用意が整いました。
お誂えならではの特別な一枚が完成いたしました。
職人共々、心よりのお祝いと末永いご多幸をお祈り申し上げます。