名古屋帯(織り)
シンプルで時代に変遷されない意匠は、永遠の古典柄。
このイカット華文もその一つでございますね。
だからこそ、そのものの素材、織の技量や表情が大きく問われるように思うのです。
勝山さんの作品は全て絹の魅力、
古来の伝統技法から生まれる絹のみが持つ力を引き出すこと。
蚕の交配から始める途方もない労力によって育まれた蚕の吐く美しい糸、
塩浸けの優しく丁寧に扱われた絹の艶は格別です。
詳しいことは分からなくてもなんだか違う。
その違いに気付き、認め、愛でてくださるお客様がいらっしゃることで工芸の世界は続いていく。
本作品の解説からは外れてしまい恐縮ですが、たゆまない努力が求められる平凡は非凡なのです。
塩蔵繭の奥から滲みでるような輝きは、締めると更に輝きます。
華やかさや豪華さとは趣が違う、落ち着いた佇まいのイカット華文。
さりげない、侘び寂びのような感覚でしょうか。
付下げに、そして紬にと、様々なお召しものに。
個人的な想いですが、この柄を拝見しておりますと、
故喜多川俵二氏の倭錦で、
そして、故北村武資氏の経錦でいただいていた作品とはまた違う趣の美しさに、しみじみ見とれてしまうのです。
■ 勝山健史 九寸織名古屋帯(イカット華文)
- 蚕品種:あけぼの
- 経糸: 生引き 生糸
- 緯糸: 塩蔵 灰汁練
- 仕上げ: 湯洗 水洗 砧
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