名古屋帯(織り)
春の勝山健史展で拝見した作品は、薄色の立涌草花文でした。
帯の地色に対して柄も同系色で織り上げた単色の帯でしたが、壁糸のような、やや張りがありざらっとした糸遣いがとても面白く、独特の風情を保ち、奥行きを感じたものです。
その帯と同柄で地色を濃紺色に、柄である立涌草花文の色は濃紺と離れすぎず、勝山さんにお任せで、とオーダーさせていただいた作品です。
画像では分かり難いかもしれませんが、帯地全体に鉄柵唐草文が織り上げられていますから、例えばお太鼓裏ではその文様の陰影をお楽しみいただけますね。
地紋の鉄柵唐草文と柄である立涌草花文の重なりがとても美しく、古いヨーロッパの裂地のような重厚さを感じます。
実際の帯は軽くしなやかですのに、そうと思わせない陰影感を放つのです。
シンプルで時代に変遷されない意匠こそ、そのもの本来の力が問われます。
塩繭という類い希な絹だからこそ美が生まれるのでしょう。
えり新さんは箔がお好きだから、と勝山さんに言われるぐらい、西陣の昔ながらの箔の輝きに心惹かれる私共。
今回ご紹介いたしました作品は箔ではありませんが、独特の糸遣いの作品です。
紬等のお洒落着から、軽めの訪問着まで、幅広いお召しものに。
■ 勝山健史 九寸織名古屋帯(立涌草花文)
- 蚕品種:あけぼの
- 経糸: 生引き 生糸
- 緯糸: 塩蔵 灰汁練
- 仕上げ: 湯洗 水洗 砧
●品切れ