袋帯
今の時代のフォーマルは、一昔前とは変わってまいりました。
弊店の好みがそうなのかもしれませんが、シンプルな意匠に極上の素材こそ、今の私達が求める着物ライフに寄り添う洗練があるように感じています。
数多の柄で装飾を施すよりは素材を大切にする、例えれば和食のような感覚でしょうか。
美術工芸「啓」さんの創作帯も、素材とシンプルな意匠が特徴ですね。
この度ご紹介いたします作品は、柔らかい黄金色に輝く袋帯。
光線によって、淡い檸檬色のように、黄蘗色のように、と表情を変えるのです。
そんな「柔らかい黄金色」に映るのは、黄色と白の極上の糸の艶で表現された織りだから。
エルメス社御用達のブラジリアンシルクを、糸味を損なわぬようゆっくりと引き出し、丁寧に染め上げたからこそ得られる糸の艶や光沢感は極上なのです。
糸遣いも平面ではなく、黄色の糸は袋帯を斜め段状に横切るように織りを変え、立体感と奥行きを加えつつ、一方、白の糸は、経にすらりと、点と縞ラインで織り上げる縞熨斗目。
柔らかい光を放つ黄色と白に加えた最後の仕上げは、本銀糸による箔の輝きでしょう。
本銀糸を、西陣の伝統、本懐でもある「引き箔」で施します。
手間のかかる本物の箔、しかも本銀箔ですから、その輝きは違うのです。
お締めいただきますと、光線によりお出かけ先により様々な表情を魅せてくれることでしょう。
従来の金の錦の袋帯には表現出来ないまろやかさをご堪能いただけます。
あらゆる礼盛装のシーンに。
■ 袋帯(三原綾錦) 美術工芸 啓
●品切れ
※御誂えや似寄り品等は、お問い合わせ下さい。
「美しいキモノ」2022年 春号 p.44 に掲載されました。