裏地の御誂え
「裏勝り。」
男性のお召し物は、女性と違い友禅の多彩な柄が望めない為、裏地に凝ることを「裏勝り」といいますが、この度ご依頼を受けたN様の羽裏もまさしくそれ。
見えない処にこそ気を配る。かっこいい!
気軽にお召しになれるお着物を、とご依頼をいただきました。
男性の場合、羽織と着物でお出かけされるケースが殆どですね。
お着物は、軽く、着心地も良い手織りの本場大島紬を、そして、羽織はお洒落な柄のシルクウール地をご提案いたしました。
バーへお仲間と出かける時や、気分転換として気軽に着用されるシーンを想定のN様、飲んで無骨に扱っても大丈夫なものを、とのリクエストにお応えしたシルクウール地なのですが、お洒落な柄で質感も良く、大島にも良く合うのです。
そして、この大島紬の着心地は、弊店のお得意様であるお姉様のお墨付きです。
そして、羽織の裏が、ご依頼の最大のポイント。
歌川国芳のお気に入りの浮世絵を是非羽織の裏に用いたい、というご要望です。
ご自身も猫がお好きで、この浮世絵はとてもお気に入りなのだとか。
国芳の描く沢山の猫の曲芸師達の様子、とても楽しそうですね。
男性用の羽裏といえば、墨書きの富士山、五十三次を模した風景図、龍、などですから、脱いだ時にこれだけカラフルな猫曲芸師が見えれば、とってもお洒落!
ワクワクするような羽裏になることでしょう。
まず羽裏用広巾の生地をご用意し、職人に手描きで染めていただきました。
さほど難しくない柄でしたら、羽裏を描く職人に依頼するのですが、完全にこの国芳のタッチを再現出来る職人となれば手の良い職人でないと難しい。
訪問着の染めも手がける職人に依頼いたしました。