名古屋帯(染め・刺繍)
そよと咲く菊、絡まる蔦。
揺れる葉の、なんとしなやかなこと。
夜の静けさを想い浮かべる藍鉄鼠色の落ち着いた背景に、白く浮き上がる野の草花が印象深く、心に残りませんか。
本糊糸目友禅(真糊)で描いた手描きの染名古屋帯です。
山野の連なりのようにも網代のようにも映る垣の表現も素敵ですね。
染屋さんで拝見した時、図案の決め手はこの垣でした。
ゴム糊ではなく、旧来の餅米の糊を使って描かれる友禅は、糸目の景色そのものが御馳走です。
真糊ならではの僅かに白茶味を帯びた白さが味わい深く、上質さを語りますね。
菊や蔦は、白さに僅かに赤味を加えるのみでシンプルに仕上げつつ、
揺れる葉は縹色で染め上げ、更に艶やかな群青色の濃淡で刺繍を施し、アクセントに。
菊や蔦の各所にも様々に刺繍を加えました。
放つ華やかさではなく、さりげなく心に残る。そんな染帯です。