付下
薊の花。
風が吹く度、ざわざわとしなるような草原に、ひときわ目を引く、深い赤紫色の花。
すっと空に伸びた姿は気高く、とげの痛みさえも、自然に淘汰されない生命力を感じませんか。
アトリエの周りの四季折々の自然の草花を描くことに視線を定め、氏独自の感性で、抽象化し、文様のようにグラフィカルに描く作品の多い氏ですが、この作品は、文様のようにではなく、より忠実に、且つ作家の目に映る彩色で、野に咲く薊を描いています。
写実的な作家の元で修練を積まれた氏の、そのベースに触れるような付下ですね。
白茶色にも映る薄いグレイの地に、赤紫色の薊が何と綺麗な事でしょう。
すっと伸びた茎、触れるととげに触りそうな活き活きした葉、湯本エリ子さんらしい、いえ女性作家ならではの「柔らかい強さ」に満ちた着物です。
着物の素材も、何も地紋がない生地ですから、より薊が浮き立ち、凜とした空気感も伝わって参りますね。
薊は種類が多く、春に咲く薊もあれば、秋に咲く薊も。
野に咲く可憐な花にフォーカスを当てた付下、
さて、何をイメージして、まといましょうか。
日本工芸会正会員
1951年 名古屋市生まれ
1973年 山科春宣氏「日本工芸会」に師事
1988年 京都にて独立
2007年 日本伝統工芸近畿展 友禅訪問着「立夏」 滋賀県教育委員会教育長受賞
2008年 日本伝統工芸近畿展 友禅訪問着「椿」 京都新聞社賞受賞
2009年 日本伝統工芸近畿展 友禅訪問着「秋草文」 日本経済新聞社賞受賞
2010年 日本伝統工芸染織展 友禅訪問着「金木犀」 奨励賞・北國新聞社賞
以降、日本伝統工芸展・日本伝統工芸近畿展に毎年出展
■ 付下(薊/あざみ・湯本エリ子)
●品切れ
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